ヴォーギング / ダンスそしてミュージック。今夜Monkey Mountainです。
今日はelevenにてMonkey Mountainです。
Monkey Mountainの前にどうしても書いておきたかったことがあります。
やっと手元に届きました。
Junior VasquezのMix CDやインタビュー、Devid Depinoのインタビュー、
写真集からピックしたポストカードが初回特典に付いております。
ライナーのお仕事を頂いたのが11月末。
それからずっとヴォーギングの資料を集めておりました。
日本語の資料は殆ど見つからず、
英語のウェブサイトと格闘し、
ドキュメンタリー映画『パリ、夜は眠らない』を、
何度も何度も観てました。
途中手術や入院などもあって、
とにかく必死に資料を集め、なんとか書き上げたものの、
予定の倍の文字数、そしていま読み返してみると、
情報を詰め込んだはいいものの、
もしかしたら、本当に大事なことを、
ちゃんと伝えきれていなかったのではと思っています。
ヴォーギングという踊りはゲイのコミュニティから発展したものですが、
そもそも、ゲイのコミュニティそのものが、
とても特殊な環境であったといえます。
現在のようにテレビで出れるような程に世間に認知されていた訳では決して無く、
ゲイであることが原因で、通常の社会生活はおろか、
両親にも追い出され、家をなくすものも多く、
生きる場をなくした彼らは、
FatherやMotherと呼ばれる親代わりの人物を中心に構成される
ゲイのコミュニティ(House)に受け入れられることとなります。
第二の家族を手に入れた彼らは、そこで安らぎや暖かさを得るのと同時に、
ゲイであることを堂々と表現する手段を手に入れます。
それが、Ballといわれる会場での競い合いです。
美しさや、女性らしさ、もしくは「普通の」男性らしさ、など、
ゲイという非常識的な立場を超越した「一般社会に普通に存在する姿」もしくは
「一般社会が羨む豪奢な美しさ」にどれだけ近づけているかを競い合うのです。
採点の基準さまざまで、容姿や衣装といったものもあれば、
どれだけ気高く踊るか、が判定の中心になることもあり、
ここからヴォーギングが発展していきます。
四拍子に合わせてモデルのポージングを次々にとっていく、
その一瞬一瞬のポーズは美しくなければなりません。
また、相手にコンパクトを向けて化粧を指摘する意味合いのジェスチャーは
ヴォーギング独自の手の動きの原型です。
さて、ここまで、ヴォーギングの成り立ちをざっくりと書きましたが、
今回私はこのライナーを書くことで、
こういったゲイのコミュニティーによって作られた表現や感性が、
音楽に多大な影響を与えたことを、あらためて認識しました。
あきらかにヴォーギングで踊ることを意識したハウス・トラックや、
あくまでも美しさが大前提のセクシャルな楽曲など、
ゲイ層に喜ばれる作品が次々と作られていきます。
この当時、
ゲイでないと現場(ディスコ / クラブ)のDJにはなれませんでしたので、
パーティでプレイされる楽曲は、
当然「ゲイ特有の美意識」のフィルターを通して選ばれたものばかりです。
パーティに集まる人々の多くが何らかのマイノリティ意識を抱えていて、
ゲイであることや、白人中心社会のアメリカにおいて黒人であること、
貧困層であることなどの「社会不適合」である自分達を解放してくれる場所として
パーティが有り、音楽がありました。
もちろん、当時はドラッグを乱用するものも多かったけれど、
Houseに拾われ人とのつながりを取り戻し、
Ballで競い合うことによってドラッグから解放された者もいました。
パーティそしてBallでの競技に用いられる音楽は、
こうやってゲイ・カルチャーの影響を大きく受けていきますが、
それらの表現はマイノリティ特有の「社会不適合の意識」が根底にあり、
それを考えると、やはりハウス・ミュージックは
マイノリティが育てた音楽であることは否定しようのない事実と言えます。
ヴォーギングを意識した楽曲が作られたのと同じ流れで、
ダンサーを意識した楽曲も作られてきました。
セクシャリティにこだわらないダンサーのコミュニティが生まれ、
そのコミュニティーに好まれる楽曲を
的確にセレクトしプレイ出来たDJがダンサーからの人気を集め、
そういったDJ達の選曲スタイルが多くのクリエイターに影響を与え、
ダンサーに好まれる、(例えば)生音系のパーカッションを取り入れた
ダンス・ミュージックが作られるようになっていきます。
ここで書く、ダンサー、というのは、
ダンスを身体をつかった自己表現として明確に意識し踊る人のことをさします。
ダンスへの渇望や動機は、ヴォーギングのスキルを磨く彼らと同じです。
そういった、身体表現に対しての真摯な姿勢が
これまでのダンス・ミュージックを発展させてきました。
いま、週末のダンスフロアを見渡すと、
パーティに集まる多くの人が、あくまでも音楽主体としての聴き手であり、
テンポに合わせ身体を横や縦にゆらしてはいても、
音楽と呼応するように「自己表現として」身体を動かしているダンサーは
少ないように感じます。
特にヴォーギングに関しては、フロアでそれを観る機会が極端に減りました。
けれども、ダンス・ミュージックは
(ヴォーギング含め)ダンサー達から影響を受けて進化したものであり、
そうやって進化してきた音楽は、
やはりダンサーが多く集まる場所でその機能性を試されることで、
また新たな進化がうまれてくる可能性があるのでは、と思うのです。
けれども、ダンサーとDJそれぞれが、
自身の表現そして相手の表現に向き合わないと、進化は生まれません。
DJは、フロアでのダンサーの動きを汲み取ること。
ダンサーは、ビートをステップに利用するよりも深く音楽と向き合うこと。
もし、パーティで相互がそれを実現出来たら、
また新たなムーブメントが生まれるかもしれないし、
音楽がもっとダンスフロアにパワーを与えることが出来るかもしれない。
DJはどこでプレイしても、基本は同じ。
けれども、それぞれのパーティで、ベストを尽くしたいといつも思っています。
Monkey Mounatinは、Dazzle Drumsがダンサーの皆さんの前で
きちんとした形でDJが出来る大切な機会です。
自分達の音楽をより発展させる為にも、
ダンサーの皆さんから、沢山のインスピレーションを貰おうと思っています。
その意味で、Monkey Mountainは特別です。
もちろん、ダンサーではない、音楽主体の聴き手の皆さんにも
喜んでもらえるよう頑張ります。
どちらにも楽しんでもらえる形がきっとある筈だし、
それを考え、試すことの出来る機会は、なかなか有りません。
今夜、elevenにて、
Dazzle Drumsはオープンから終電前までの時間と
2:30からラストまで、DJさせていただきます。
Mix CD作りました。先着30名にプレゼントいたします。
早い時間だけしかいれなくても喜んでもらえるよう工夫しました。
平日ですが、仕事後ディナー後に足を運んでみてくださいね。
是非御待ちしております。
- 2012.03.22 Thursday
- Monkey Mountain
- 07:54
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- by Nagi