「観る」が主体になりつつある今のシーンと向き合いながら

 

 

 

 

 

 

先日のDanny Krivit の前にプレイした録音をアップしました。

(お越しいただいた皆様ありがとうございました!)
私もこれを聞いて復習しながら書いてます。聴いてね。
随分久々ですね。
まだインタビューの仕事があるけれど、
ピンとくる質問が出てこないので。。。
こういう時は「書く」に戻って得ることもあるんですよね。
ミックスは、ぜひpt.1から聴いてね。
盛り上げるだけじゃない音楽、心で踊る音楽、
そういうものがあってのハウスミュージックだと思う、
というのは何度も話してることですね。

 

いつもいつも忙しいと書いてしまうけれど、
今年は随分仕事を詰めすぎてると思います。
ここまでやらなくてもいいだろう、という事を
細かく手間暇を掛けてやる、という仕事の仕方。
この数年は自分たちのキャリアそして
東京の(ディスコではなく)ハウスシーンにとって
すごく大事な時期だと思ってるので、
少しでも自分たちが出来る事をやらないと、と思います。
ダンスクラシックスやディスコ、ヴァイナルブームとか、
そういった良き流れを伝えられるDJさんは多いと思うけれど、
ハウスの奥深さを伝えたいと思うDJさんは随分少なくなったと感じるので。
あとは、ここ最近は随分クラブの遊び方も変わってきて、
みんな珍しいものを「観に行く」ようになってきたと感じます。
珍しいものに人が集まったら、期待度も上がるし、
そういう元々高揚感が高まっているフロアを盛り上げるのは
(その状況に慣れてさえいれば)
さほど高度なスキルが必要されることではない、というのは
長くDJを真面目にやってきた人なら実体験でご存知かと思います。
けれども今は、DJのスキル以前に、
まずどう人を集めるか、ができれば、ビジネスは成功する、
そんなシーンになりました。
世の中がそうなるほど、私は小箱に行き、ローカルDJを聴き、
どこかに「良い音楽を見つけて現場で掛ける」という事に
もっとも多く時間を割いている本当のDJを探し続けます。
ボロボロのTシャツを着ていても神様のように見える、
そんなDJの姿に随分出会えなくなりましたね。
「何がかっこいいか」の美意識が時代によって変わった、
っていうことなのでしょう。きっと。私は変わらないけれど。

 


この、お客さんの「観る」という行為が
近年とても重要視されているからこそ、だと思うのですが、
Danny Krivit先生は、今回もDommuneで7インチセットを選びました。
7インチセットはお客さんから見えないと魅力が伝わりにくい、
という考えはダニーは以前から一貫してます。
以前Ventでプレイした時も、上から7インチでプレイしている姿を
壁に移して投影する、というのを、ダニーの希望でやりました。
7インチ、実際DJするとわかりますが、12インチよりも溝が薄くて操作も繊細ですし、
特にクラシックスやソウルだとミックスのポイントもバラバラですので、
プラスαのスキルを要求されます、曲も短いですし。
だから、結構、著名なDJさんでも、7インチでのDJは、
ミックスや出音がラフな方が多いと思うのですが、
ダニーは7インチでもスムースにミックスする方なので、
映像や見えやすいブースでないと、7インチっていうのが伝わりにくいんですよね。
だから、「フロアから手元が見えるように」というのを意識してるのだと思います。
ただ、ダニーはこれまで自身の日本ツアー、もしくは東京のギグを
7インチオンリーのセットだけやりたい、という事を言ったことはないと思います。
いつも、新しい曲、自分が作ったエディットでレコードになっていないもの、
もちろん12インチも、いろいろ掛けたい人だからです。
好きなフォーマットの中から音楽を選ぶのではなく、
音楽そのものの魅力で選ぶから、フォーマットは多様になります。
ダニーは本当にレコードを愛してる人なので、
もしレコードだけ掘っていたらいいハウスが見つかるのだったら
レコードだけで十分だと思います。
けれどもいいハウスがレコードで出てないからデータも掛ける。
もちろん、ダニー自身が作ったエディットも、ですが。
ただ、DJというのが増えすぎてしまった現在、
レコードも掛けれる、ということ、
そして何かが起きているのを「観たい」という欲求に答える、ということを
以前よりも随分求められている状況になってきました。
ダニーが最近7インチセットをやるようになったのは、
(おそらく12インチやLPはこれまで掘り続けてきた分)
7インチを掘るのが純粋に新鮮で楽しい、というのもあるだろうし、
それと同時に、
ジャケットの魅力や7インチをプレイするときの見た目のインパクト、
という魅力も理解しているからだとも思います。
一曲が短い分、クイックにミックスしていく感じも、
飽きやすい今のリスナーには合っていますよね。

 

さて、
7インチセットでもなく、
レコードオンリーでもなく、
データを使いながらDJするとき、
そして自分はスーパースターでもなく、
皆の目を釘付けにする容姿ではない場合、
つまり「観せる」という手段で
お客さんを惹きつける要素を持ち合わせていない自分たちは、
どうやって聴く人の心を動かそうとするのか。

 

ここからは毎度の、自分なりの手法/考え方、ですが、
まず音楽的には、できる限り飽きさせないようにすること。
自分の持っている曲の展開を理解して、
どこからどこまで聴いてもらえればこの曲の魅力が伝わるか、
を、あらかじめ自分の中で知っておく。
曲が終わるから次の曲をミックスしないと、という意識ではなく
(もちろん次の曲が決まらなくてギリギリになっちゃう時もあるけれど)
「この曲はここまで聴いてもらえれば大丈夫」という部分が終わったら
そこから次の曲にミックスして、聞き手が飽きる時間を極力少なくする。
もちろん曲の頭も同じで、どこからかけようか、というのは常に意識します。
ダンスクラシックスにおいては、この「どこから掛けるか」は特に大事で、
頭はビートが揺れるけど、32小節後からドラムが一定のリズムをキープしたりする
そんな曲も多くあるので、
それを聴き分けて、あらかじめ知っておくことで随分ミックス面でも役立ちます。
私はミックスが上手い方ではないし、リズム感は人より劣ってる人間なので、
ダンクラのBPMはあらかじめ測っておくことが多いです。
新譜にしろダンクラにしろ、曲の構造を知っておけば、
例えば、もし
「あ、この曲ちょっとフロアと違ったな」
と思ったら、
ある程度曲の魅力が伝わる部分まで掛けたら、次の曲にミックスして
早めに軌道修正することができます。
選曲を間違えたと感じたら、その曲が終わるまで待たずに、別の曲に変える勇気が大事。
ちゃんと曲の構造が理解できてれば、
不自然に慌ててミックスしたような印象を与えることも最小限に抑えられます。
もちろん、この曲は長く掛けないと魅力が伝わらない、と思うのならば、
堂々と長く掛ける。
で、こういう時こそ、アイソレーター、って大事だと思います。
歌やメロディ、展開に合わせて、アイソレーターを動かす、
もしくはEQを動かす。
なんども書いてるかもですが、
アイソは、聴いてもらいたい帯域を引き立てるために
別の帯域を削って効果を出すんです。
例えば、ヴォーカリストが高く歌い上げた部分で
低音を切ることで、声の動きを強調させるんです。
歌を聴かせたいからってそのままMidやHighをあげたら、
ただ耳が痛いだけですし、例えば幾ら美味しい寿司でも
無理やり口に押し付けられたら、美味しさも半減します。
アイソも同じで、いい部分を引き立てるためのバランスが大事です。
例えば「ここからKickが入ってくのを強調したい」と思ったら、
最初のインパクトで低音を出しても、しばらくしたら少しずつ元の状態に戻していく。
そうしないと、どんどん全体のヴォリュームが上がるだけです。
音量は出せばいいってものではないんです。
でも、小さければいいってものでもないんです。
全部はバランスなんです。
だからDJ前のサウンドチェックは大事だし、
(全部の帯域が伸びやかに鳴る音量を確認すること、
どのくらいのレベルでどのくらいの音量なのかをフロアに行って体感すること、
ブースにいるだけではサウンドチェックではないんです)
自分がDJしない時も、いろんな場所でいろんなDJを聴いて
自分がどう感じるか、お客さんがどんな反応をするのかを
(誰かと話していても)いつも気にしているのは大事なことです。
そして何よりも練習は大事。
先週のBPはもっとハウスを混ぜればよかったけど、
なかなか自分がうまく流れを作れなくて
(体調もあって体を動かせなかった、っていうのも大きい)
反省して、どうしたら良かったんだろう、って、
毎回終了後にけいくんと話すけど。。。
結局、それらすべてを解決するのは、練習量なのです。
練習して、パターンA,B,Cって自分の中でヴァリエーションがあれば、
自分がなかなか集中できなくても、
経験でなんとか形を作れたりするものなのです。
練習が大事。
そして、DJ中に体を動かすこともすごく大事。
ダンスミュージックだから、自分の体を動かして
身体をフロアと同じテンションに近づけると
集中力を持続できることが多いし、発想も浮かびます。
普通に、遊びに行った時、全く動かないDJさんより、
動いてるDJさんの方が、観てて楽しいですよね。

 

「観せる」が大事な今のシーンの思うと、
DJ中は動きが大きくても損はない、と個人的には思います。
今人気のあるDJさん、みんな動きが大きいでしょう?
ミックスに必要ではない余分な動きも、たくさんしてるでしょう?
お客さんにリアクションを求めるような派手な動きだけではなく、
音楽に合わせてひらひら動いたり、踊ったり。
あくまでも、ブースで腕を上げてお客さんにリアクションを求める、とか、
そういうのではない、音楽に夢中になるからこその動き。
私自身は昔からダンスフロアにいるのが好きだったので、
ブースで踊るのは、ありがたいことに、すごく自然に出来ることです。
もし、どうもブースで踊ったりはなかなか難しい、というみなさんは、
まずダンスフロアでもっと踊る、というのはいかがでしょう?
何より、誰だって、踊って貰ったら、嬉しいです。
これは私の勝手な統計ですが、
多くの、DJブースで真顔のDJさんは、
ダンスフロアでも立ってるだけだったり、軽く揺れる程度だったり、
もしくはずっとBarで飲んでたりする印象が強いです。
もしくはDJブースの横でじっとDJさんを見ていたり。
私自身もダンスフロアにずっといるってことが昔より少なくなりましたが
それでも出来る限り音楽を聞くし、時には話の途中でも曲のブレイクで
声を出してギャーギャーやったりします。
まずは積極的にフロアから踊って声を出して盛り上げて、
っていうのを体に染み込ませておくと、
DJ中にブースでも自然と体が動きます。
変な動きも、フロアで音楽に合わせて積極的にやってると、自然とブースでも出てきます。
そうすると、もっとDJが楽しくなるし、リラックスします。
動かないと逆に緊張するし、頭も硬くなるし、発想も浮かばず。。。
ああ、良くない、悪循環だ。反省。
そう、私自身、体が動かない時は、大抵調子が悪くなるんです。

 

「有名人」でないDJは、
DJプレイの時間に少しでも人の心を引きつけることが大事だから、
その短い時間にどれだけ自分がこの音楽を愛してるかを
音楽そのものと、DJへの姿勢で伝えていかないと。
好き、ではなく、その「熱量」がちゃんと伝わるプレイを
毎回意識してブースに立つことを忘れちゃいけないと思う。
でも、こうやって書くと、Dazzle Drumsはいいじゃないか、
曲も出してるし、CDも出してるし、って
思う人も多いかもしれません。
でも、曲にしろ、mix CDにしろ、
「出す」って決めて必死に動かなければ実現しません。
GWにリリースしたCDだって、
去年末にDisk Unionの方々と企画の話をしてから、
実現するまでにいろんなアイディアの出し合い、そして
そこから生まれてくる面倒なことが沢山あります。
ハウスの有名なDJさんのミックスCDのリアルな売上枚数を教えていただき、
じゃあ自分たちはどのくらいの枚数を目指すのか、
一人でも多くの人に手にとってもらうのにはどうしたらいいか、
誰もが聞きやすい、掛けやすいCDにするのにはどうしたらいいか、
ハウスだけじゃなくダンクラのエディットも入れたほうがいいのでは、
そんな試行錯誤を重ねた上で、形に残るものを作っていく。
「リリースする」って決意して、実際に形にすることは、すごくパワーがいる事なんです。
ここで私は声を大にして言いたいのは、
みんなもっとsoundcloudなり、Mix CDなり出して、
もっと自分のDJを沢山の人に聞いてもらうための「名刺」を
作ったほうがいいと思います。
「名刺」が必要だから曲を作る、というのを
よく聞きますが、名刺のための曲作り、は、
動機が違うのでは、と、個人的には、思います。
作りたい、作ったものを掛けたい、というのが、
曲作りの動機、だと思うのです。
だから、DJをやりたい人ならば、DJミックスを作って、
「自分はこういうDJをします」っていう「名刺」にしたほうがいいと思います。
どうしてみんなミックスをもっと積極的にアップしないのか、分からない。
CDを作るのは経済的にも大変かもしれないけれど、
ミックスだったら、あって損なことなど全くないと思います。
例えばイベントにDJで呼ばれて、集客を要求されたら、
自分のsoundcloudのリンクと一緒に友達にメールを送って
「自分はこういうDJやってます、聴きに来てね」って書けば、
自分の音楽も伝わるし、
無理やりやらされてた(かもしれない)集客作業も
音楽の評価として自分に返ってくれば、なんらかの形でプラスになります。
「2曲目がよかった」と言われたら
その人が来てくれたときにその曲をかけたら喜ぶし、
そういうコミュニケーションが取れることこそが
ローカルDJの醍醐味でもあります。
有名無名に関わらず、どんな立ち位置だって、予算がなくたって、
今はネットにミックスをアップして拡散できる時代です。
昔はDJは、CDを焼きまくったり、テープをダビングしまくったりしたのです。
遊びに行けば、知らないDJさんに声を掛けられて、
「こういうパーティやってるから、よかったら聞いてみて」
って、パーティのお誘いと同時にミックスを貰ったりしました。
それに比べたら全然費用もかからないのに、どうしてやらないの?
東京は人が多いから羨ましい、っていう皆さんも、
ミックスはどこに住んでたって作れるしアップできるのだから、
どんどんやったらいいと思います。
苦労してミックスを仕上げる、という作業を繰り返すだけで、随分勉強になる。
現場と家とでは違う、とか、いろんな意見があるけれど、
もし自身が、自分の音楽性を示す何らかの「名刺」を持っていないならば、
ミックスをアップして、聞いてもらうことは、絶対やったほうがいい。

 

「観る」が主体になりつつある今のシーンに変化したのは、
DJの音楽的表現力の低下そのものが原因なのかもしれない
と、と仮に考えて。
もっと音楽そのものを聴きたい、楽しみたい、と多くの人に思ってもらうように
DJそのもののスキルを上げていく。
そんな努力は、やって全く損はない。
練習する、ミックスをアップする、現場に行く、他人のDJも積極的に聴く、
そしてそれらを全部楽しむ、そんな仲間がもっと増えたらいいなと思ってます。

 

 

 

昨年末から苦労して完成したMix CD、宣伝させてください。

『Unreleased Remixes & Edits』Dazzle Drums

https://diskunion.net/clubt/ct/detail/1007902927

Disk Union限定です。
なぜなら大人の事情だからです。なので、配信でも売りません。

全部ではないですが、下の動画で何曲か聴けるようにしました。

タイトルがついてる曲は、頭からCDJとかでプレイできます。

interludeと書かれてるトラックは、ミックス部分です。

 

 

 

今月、いくつか東京以外もDJしますので告知させてください。

 

 

 

 

5/24旭川、5/25北見、と北海道でDJいたします。

東京以外の都市でDJするときにきになるのは、

定番とそうではないもののバランス、

あとはどこまでエッジを効かせるか、

もしくはどこまで柔らかくするか。

頑張ります、せっかく呼んで頂くのだから。

Fantaさん、ありがとうございます。

 

 

こちらは2年ぶり?の韓国、ソウル。

前回もDJさせていただいたVENUE /で、

私たちの曲をかけてくれたLEAMさんと今回は共演です。

Riaさんありがとうございます。

ハウス、強かった記憶です、オーガニックなハウス、

アンダーグラウンドなハウス、あとはファンキーなダンクラ、

持っていきます。

 

 

他、東京開催はこんな感じ。

 

Block Partyは次回はダンクラセット。楽しみ、ご期待ください。

前回から16時スタートになりました。

やって見たら、DJ時間が足らない、って思いました。

なんていう贅沢。。。いや、でも慣れていきたいです。

ぎゅっと凝縮した日曜午後のパーティにしたいのです。

 

 

 

次回MOMCの詳細も出来てます。6月21日です。

 

 

ゲストはVince Watson、に、Sauce81さん。

このお二人が使ったRoland機材をFoyerに展示、

誰でも触って音を出せる、

しかも抽選で機材もプレゼントする、という

Roland様のサポートで実現した企画、

去年からやりたかった企画、です。

「観る」が主体なら、何を見せるのか。

その視線の先が、「素晴らしい音楽表現」であるならば、

それはちゃんと音楽に返って来る。

どんなシーンになっても、どんな価値基準になっても、

音楽そのもので心を動かす、という信念に

まっすぐでありたいと思います。

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:Dance / House Music



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